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平成28年度 阿倍野区学校保健大会にて講演

 2016年11月24日木曜日、阿倍野区学校保健大会(於:阿倍野区区民センター大ホール)にて講演を行いました。演題は『噛むことから学ぶ〜噛んで得しよう!』で、噛むという行動はどの様なものであるか?成長発育期に「噛む」という行動で何が起こるか?成長発育期に「噛む」ことが歯並びにとってどれだけ重要な事か?をお話しさせていただきました。

 最初に、1年前に行われた、私が学校歯科医をつとめる大阪市立金塚小学校の学校保健委員会での調査結果をお話ししました。保健委員の児童が全校生徒に噛む回数を調査したところ、小学校就学時までに「噛む」という習慣はあまり身についていない事、小学校3、4年生で、生え替わりによって乳臼歯が抜けて奥歯の本数が少なくなると必然的に噛む回数は増える事、小学校高学年で、永久歯列が完成する頃、咀嚼効率が上がる事で噛む回数が減少する傾向がある事。この三点が判明し、小学校における「噛む」事についての指導の注意点が明確になりました。就学までに家庭において「よく噛む」習慣が無いと言う事は、育児者にその認識がないと言い換える事ができます。今回の講演では、この育児をする親御さんに向けて、「よく噛む」という習慣が子供にどの様な良い影響が生まれ、それが、どの様に生活に「トク」をもたらすかと言う切り口でお話しさせていただきました。

 「噛む」という行為は、漢字では「歯」と「口」でいかにも「歯」が主役のように見えますが、実は「舌」が重要な役割を果たします。食べ物を迎え入れるとき、舌で引き込みます。口の中で食べ物を移動させるのは「舌」です。上下の歯でプレスできる位置に食べ物を運ぶのも「舌」の役割です。上アゴ(口蓋)に食べ物を擦りつけてつぶす事もできます。ペースト状になった食塊を喉の方に送り込むのも舌の役目です。食べ物をのみ込むときに気道を一時的に閉鎖する弁を動かすのも舌の筋肉の役割です。咀嚼するとき、舌は食塊を色々な場所に移動させ、終盤は奥歯近くで上アゴの方にペースト状の塊にして纏めてゆきます。そして、上アゴの奥、喉の入り口に食塊を舌で持ち上げて、舌の力で後方に押しやって喉に流し込む「嚥下」という作業をします。

 「舌」は「噛む」行為のもう1人の主役です。「舌」という筋肉は意外と大きな塊で、大きな力が口の中に作用し、重さも結構あります。アゴの骨の成長発育はその舌の筋肉の力の影響を受け、その重みも作用していると言う事を解説致しました。この部分は、「顎顔面の成長発育」のお話しになりますので、少し難しい内容でしたが、保護者の方も興味深く聴いていただけたように思いました。(顎顔面の成長発育はまた別の機会にブログに掲載する予定です)

 不正咬合は上下のアゴの骨の成長発育のアンバランスとアゴの骨の成長不足による小さなアゴの骨に歯が入りきらない事で起こります。遺伝的な要因は人間の力ではどうする事もできませんが、骨の成長発育には環境により影響を受ける部分もあります。「軟骨性骨成長」は遺伝要素のみに左右されます。しかし、「結合組織性骨成長」というのは環境要素にも影響を受ける事が過去の研究で明らかにされています。最近「子供の出っ歯の治療は意味がない」というような報道が一部されていましたが、これは、「子供の骨格性上顎前突で遺伝要素の強いものは永久歯列まで待って治療しなければならない」という表現が正確なのです。つまり、顎顔面骨成長の中で環境要因によって生じる不正咬合も存在すると言う事です。

 「舌」は上下顎骨の内側に存在する非常に大きな筋肉の塊で、上下の顎骨に圧力(筋圧)をかけています。つまり、成長期には環境要因として作用します。結合組織性骨成長の中で「骨膜性骨成長」というものがあり、圧のかかった部分の骨が吸収し、その反対側に骨が添加されて骨が大きくなる成長発育があります。舌の筋圧で前歯が出たり(出っ歯)、下のアゴが大きくなりすぎたり(受け口)、アゴの骨が十分に大きくならずガタガタの歯並びになったりすることがあります。アゴの成長発育を良好なものにして、お子様の不正咬合を予防する方法があれば、将来矯正歯科治療を受けなくて済むかもしれません。その浮いたお金で何を買いましょうか?(笑)

 舌を前に持ってくる癖、前の方の歯で噛む癖は、出っ歯や開咬の原因になります。下を向いて噛むと、重力で食塊が前方に移動して、前方の歯で噛む事になってしまいます。それを防ぐには、舌を口の奥に持って行けばよい、奥の歯で噛むようにすればよい、背筋をのばして噛むようにすればよい。これって正しい噛み方、のみ込み方(咀嚼・嚥下)です。舌を持ち上げることなく、だらっと低い場所(下の歯列の内側)に位置させると下のアゴばかり大きくなり受け口になることもあります。舌を挙上させる習慣をつければそれを防ぐ事ができます。舌を挙上させるというのは、食塊を喉に送り込む正しい咀嚼・嚥下の舌の運動そのものです。舌を動かすと、ハグキ部分の骨を内側から圧迫します。その刺激で骨成長が良好になれば、ガタガタな歯並びにならないで済むかもしれません。食事の時によく噛むと言う事は、それだけ舌を上下左右に移動させます。舌の筋トレをしている事になります。

 食事の時に

  1. 噛む回数を増やす
  2. 奥歯で噛む(背筋を伸ばして噛む)
  3. 舌を持ち上げて奥の方に移動させ、正しいのみ込み(嚥下)を行う。

ことが重要です。

もう1つ、口で息をすると空気を通すために舌の位置が下がります。鼻で息をする事も舌の位置を正しくするためには重要な要素となります。

 躾という言葉があります。良いイメージがない人もいるかもしれません。それなら、テーブルマナーと言い換えましょう。姿勢よく食べる。よく噛んで食べる。正しい舌の動かし方をする訓練になります。ワンプレートでの食事は前屈みの食べ方を誘発します。スマホ、ゲームウォッチも姿勢を悪くする要因になります。

 もっと小さなお子様には、離乳という時期がありますが、離乳には段階があります。授乳期、赤ちゃんは舌を前後にのみ動かして母乳またはミルクを飲みます。授乳期から移行するときは、舌と上アゴでペースト状のものを喉に送り込む訓練をします。少し大きくなってきたら、舌を左右に動かしてハグキで噛む事を学習します。そして普通食に移行する準備に入ります。このステップも重要で、それを理解しながら離乳食を作り与える子育ては、成長発育に大きな影響を与えます。

 普段何気なく食事をしていますが、恐らくしっかり育てられたから、普通に食事ができているのだと認識し、現在または将来の子育てに役立てていただきたいと願います。

 平成17年に公布された「食育基本法」に則り、健全な食生活の実践による心身の健康増進や豊かな人間性の育みを実現する一助として、今回の講演のテーマとして「噛むことから学ぶ」という内容と致しました。噛むという行為が、子供の顎の成長発育にどの様な影響を与え、噛むという行為で不正咬合が予防できる可能性がある事を伝えたいと考え講演させていただきました。

 噛むことは、口の中で食べ物を粉砕し、適度の水分を含んだ流動性のある食塊を形成し、喉を通りやすい状態にする事であり、最終的には生命を維持するためのエネルギー源を取り込む重要な役割を持つ。また、噛む行為は、歯だけでなく、舌や口腔粘膜が互いに働き、唾液の供給も含めての複雑な作業となる。その中で特に「舌」は多くの働きをしている。

 顎骨の成長発育には遺伝要素の他に環境因子に影響を受ける要素がある。骨膜性骨形成は骨に作用する圧力刺激などに影響を受けて骨成長を遂げる。成長発育期に顎骨に近接する筋の圧力は顎骨成長に大きく影響を与える。上下の顎骨の内側には「舌」という巨大な筋肉の塊が存在し、舌の位置や筋圧により不正咬合が生じる場合もある。

 正しい舌の動きや正常な舌の筋肉の発育は「噛む」という行為から形成される。生まれてから永久歯が生えそろうまでの時期に、適正な摂食・咀嚼・嚥下を行う環境を与える事で、舌は良好に成長し、その舌の筋圧で顎骨も良好な骨成長を遂げ、それが、良好な歯並び形成につながる。

 成長発育期の摂食・咀嚼・嚥下の重要性を知れば、「我が子」の、「我が校の子供達」の、「我が地域の子供達」の、「我が国の子供達」の健康につながる。

以上、記憶していただき「カミング30」(一口30回噛みましょう)を実践していただければ幸いに存じます。

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